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院長ブログ
虫歯じゃないのに歯が溶ける!? ~酸蝕症について~
はじめに
「冷たいものを食べたときに歯がしみる」「歯の先が透けて見える」「歯が黄ばんできた気がする」――こんな悩みを抱えていませんか?
もしかするとその原因は**酸蝕症(さんしょくしょう)**かもしれません。
酸蝕症は、日々の食事や生活習慣の中で知らず知らずのうちに進行する「現代型のむし歯」とも言える疾患です。今回は、家庭を持つ30〜60代の女性が知っておきたい酸蝕症の原因と対策について、わかりやすく解説します。
虫歯でなくても歯が溶ける


噛むと歯が痛むと言って来院された患者さんのお口の中です。前歯の裏や奥歯は溶けています。患者さんは日課として黒酢を飲み続けているそうです。実はこれは虫歯ではありません。酸蝕症という歯の溶ける病気なのです。
虫歯は一部分、酸蝕症は広範囲に起きる
歯はカルシウムやリンなどのミネラル成分でできていて、酸によって溶かされます。虫歯は虫歯菌が出す酸によって歯が溶ける病気です。歯の溝や歯と歯の間など、虫歯の起きる部位は限られています。
それに対して酸蝕症は食べ物や飲み物などに含まれる酸によって溶かされます。食べ物や飲み物はお口全体にいきわたるので広範囲の歯が溶かされます。
酸蝕症は歯の見た目も質も悪くする
酸蝕の進行した歯にも穴が空きます。酸で弱くなった歯はすり減りやすく、冷たいものにしみたり噛んだ時の痛みや歯の破損が起きやすくなります。
酸蝕症の原因
1. 飲食物による影響
以下のような食品・飲料を頻繁に摂取することが酸蝕症のリスクを高めます。
- 炭酸飲料(コーラ、サイダーなど)
- スポーツドリンク
- 柑橘類(レモン、グレープフルーツなど)
- ワインやビネガー系のドレッシング
これらに含まれるpH3以下の酸性成分が、歯の表面を徐々に溶かしていきます。
2. 胃酸の逆流や摂食障害
逆流性食道炎や、嘔吐を伴う摂食障害(過食症・拒食症)では、胃酸が口腔内に流れ込むことで、歯が直接酸にさらされます。
3. 不適切なブラッシング
酸性の飲食物を摂取した直後に歯磨きをすると、柔らかくなった歯の表面が削れやすくなるため注意が必要です。
酸蝕症の症状
- 歯の先端が透けて見える
- 歯の色が黄ばんで見える(象牙質が露出している)
- 歯の表面がツルツルして光沢がない
- 冷たいものにしみる
- 歯がすり減って短くなっている
初期の症状は非常に見逃されやすいため、定期的な歯科受診でのチェックが重要です。
食べ方、飲み方によっても歯が溶けやすくなる
酸性度の強い飲食物をほぼ毎日のように摂る習慣があったり、時間を変えてちびちびと飲んだりする人ほど歯が溶けやすくなります。昨今の健康ブームなどで習慣的にとっている飲食物をチェックしてみましょう。
酸蝕症の予防と対策
1. 飲食のタイミングと方法を工夫する
- 酸性の飲食物は、食事中や食後すぐに摂るのを避ける
- ストローを使って歯に触れる時間を減らす
- 飲食後すぐの歯磨きは避け、30分ほどあけてから行う
2. 口腔内の中和を心がける
- 飲食後は水で口をゆすぐ
- キシリトールガムなどで唾液分泌を促す
唾液には酸を中和し、歯の再石灰化を促す働きがあります。
3. フッ素を活用する
- フッ素配合の歯磨き粉を使用し、エナメル質を強化
- 歯科医院でのフッ素塗布も効果的です
4. 定期的な歯科受診
- 自覚症状がなくても、定期検診で早期発見・早期対応が可能です
- 必要に応じて、マウスピースなどの保護器具を提案されることもあります
酸蝕症を防ぐ暮らしのヒント
30〜60代の女性は、家族の健康を守る中心的な存在でもあります。
健康な歯を保つことは、ご自身の美容・健康だけでなく、家族の食生活や生活習慣にも大きく関わります。
「酸」は見えない敵。美味しいものを我慢する必要はありませんが、ちょっとした工夫で歯を守ることができます。
まとめ
酸蝕症は、現代の食生活において誰でも起こり得る歯のトラブルです。
知らないうちに進行することも多いため、「予防」が何より大切。生活習慣を見直し、定期的に歯科医院でチェックを受けることで、健康で美しい歯を保ちましょう。