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院長ブログ
どうして根の治療は時間がかかるのか?
はじめに
「根の治療って、なんでこんなに回数がかかるの?」
多くの患者さんが抱く疑問の一つです。特にお仕事や家事でお忙しい30〜60代の女性の方にとって、何度も通うのは大きな負担になることも。今回は、その「根の治療(根管治療)」が時間を要する理由と、患者さんに知っておいてほしい大切なポイントをお伝えします。
そもそも根の治療ってどんな治療?
根の治療とは、歯の内部にある神経や血管(歯髄)が炎症や感染を起こした場合に、それを除去し、根の中をきれいにして封鎖する治療です。専門的には「根管治療」と呼ばれます。
炎症や感染の主な原因は、深い虫歯や歯への外傷などです。実際には根の汚染された部分を取り除いて薬で神経のあった管状のスペースを封鎖するために根の中心を繰り抜くように行います。
歯の神経は非常に複雑で多様な構造です。神経の管をヤスリのついた針金で慎重に削っていくのですが、根の中は肉眼では見えないので知識や理論だけでなく感覚の鋭さや繊細さを求められます。
また、根の治療は虫歯に冒された歯にできる最後の治療なので、根の治療は成功率も悪く(初めての神経の治療の成功率は80〜90%、根の再治療は60〜70%程度)、治療の中断してしまうと一気に抜歯のリスクは高まってしまいます。
なぜ根の治療は時間がかかるのか?
1. 歯の中はとても細かく複雑
歯の根の中には「根管」という管が通っていますが、その形状は非常に複雑で、人によっても異なります。細く、曲がっていたり、枝分かれしていることもあります。これらを確実に清掃・消毒するには時間と丁寧さが必要です。
2. 感染の取り残しを防ぐための繰り返し処置
1回で治療を終えようとすると、見えない場所に感染が残るリスクが高くなります。再発を防ぐためには、根管の内部を複数回に分けて消毒・確認しながら進めるのが安全です。
3. 症状の経過観察が必要
炎症の程度によっては、1回の治療で痛みや腫れが完全に引かないこともあります。そのため、経過を見ながら数回にわたって処置を進める必要があります。
4. 治療後の密閉処置も慎重に
根の治療が終わった後は、再感染を防ぐために「根管充填」という密閉作業を行います。この工程も精度が求められるため、時間をかけて行います。
根の治療の方法
1.根の中に細菌が入らないようにする
歯の根の治療は主に虫歯が深くなって歯の神経が汚染された時に行われます。実際には根の汚染された部分を取り除いて薬で神経のあった管状のスペースを封鎖するために根の中心を繰り抜くように行います。
2.神経や汚染物を取り残さないようにする
歯の神経の管は歯の種類よっても、人によっても本数や形が大きく違います。治療の時に神経の管を1本でも見逃してしまうと痛みや再治療の原因になります。神経の管は前歯と小臼歯で1~2本、大臼歯は1~4本となり、この一本一本を綺麗にしていかなければなりません。
3.緊密に薬を入れる
歯の神経の管は単純なの丸い形ではなく、楕円形、三角形、樋状、二股状になっていたり、急激に曲がっていたり、とても複雑な形をしています。この複雑な根の中を小さな入り口から消毒し、根の中に細菌が繁殖しないように緊密に封鎖する必要があります。

根の治療で治らないときは?
通常の根の治療は根の中からしてアプローチ治療を行います。治療の効果が思っていたように得られない場合は外科的歯内療法といった歯ぐきを開いて外側からアプローチをして治療を行います。
根の治療中に起こりうること
根管治療中に痛みが強く出てしまう方がいます。その場合は麻酔をして根管治療を行います。根の中に汚れを残したままだと、痛みが残ったり、病気の再発が起こったりします。
根の治療後に軽い痛みが出ることがあります。専門医の報告ではおおよそ3%程度と言われています。数日で治まることが多いですが、痛みが強ければ痛み止めを飲むようにして下さい。
初回で終わらないと再発のリスクも
根の治療を途中でやめてしまうと、根管内で細菌が再増殖し、再度腫れたり痛んだりするリスクが高まります。結果的に再治療が必要になり、最悪の場合は抜歯に至ることも。
患者さんができること
- 治療の間隔を開けすぎない:週に1回程度のペースで通うのが理想です。
- 痛みや違和感は早めに相談する:放置すると悪化する可能性があります。
- 治療後の被せ物までしっかり終える:根の治療だけでは完了ではなく、その後の補綴処置までがワンセットです。
江口歯科医院の取り組み
当院では、患者さんの負担をできるだけ軽くしながらも、再発を防ぐ確実な治療を心がけています。CT撮影や拡大鏡などの設備を活用し、精密な根管治療を行っています。
まとめ
根の治療に時間がかかるのは、「確実に治す」ための必要なプロセスです。何度も通うのは大変ですが、将来の歯の健康を守るための大切なステップなのです。